チーム医療について
一人ひとりの患者に対し、関係する専門職が集まり、チームとしてケアに当たること。
従来は、患者への医療ケアの内容を主治医が決定し、看護師、薬剤師、栄養士などの各専門職に指示するシステムが一般的だったが、近年は、患者の状態に応じて複数の科、複数の職種にまたがるチームで医療サービスを提供していくのが一般的となっている。
患者本人やその家族もチームの一員としてとらえるケースもあり、時と場合によって「チーム」の範囲は異なる。
このような医療提供体制が普及してきた背景には、医療の高度化がある。
診断技術や治療の多様化・複雑化に伴って専門分化が進み、主治医1人だけでは様々な情報を総合して判断することが困難になってきている。
質の高い安全な医療へのニーズに応えるには、情報と意見を多職種で交換しながら意思決定を行っていく過程が不可欠である。
理念上、チーム内ではどの職種も対等の立場だが、法的に、医療行為は医師の指示のもとで行うことと規定されているため、各専門職の主体的な判断が患者のベッドサイドで十分にいかされているとは言いがたい。
厚生労働省は2010年3月に「チーム医療の推進について」と題する報告書を上げ、これに基づいて現在、看護職等の業務範囲や教育を見直す作業が急ピッチで進められている。
チームの具体例として、胃がんの患者が病巣の摘出手術で入院するという場合、医師では摘出に当たる外科以外に、進行度やがんのタイプに応じて、化学療法が必要であれば内科、放射線療法が必要であれば放射線科、精神状態が不安定なら精神科、痛みが強ければ緩和ケア科などが治療に関与する可能性がある。
これに各科の看護師と、胃切除後の食事指導で管理栄養士、心理カウンセラー、経済状態や家族の状況が療養生活を支えきれないと思われる場合は医療ソーシャルワーカーが加わるなどして、カンファレンス(会議)を開き、カルテや看護記録を共有しながら治療やケアの方針を決定していく。術後に在宅療養へと移行する場合は、患者の自宅に出向いて訪問診療を行う医師を始め、訪問看護師、ケアマネジャー、薬剤師、栄養士、ヘルパー、理学療法士、訪問歯科医師などでチームを組織し、病院との連携を図りながら治療とケアを進めることになる。
疾病の種類や障害によっては、他に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などがチームに加わることもある。
( 石川れい子 ライター の記事から抜粋しています。)